米中貿易戦争の余波に思うこと ~外資誘致合戦が日本に与える影響~

11月18日付の日本経済新聞に、タイとマレーシアが相次いで外資の優遇政策を打ち出し、自国への製造業誘致を目指しているという記事が掲載されていました。

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背景には、米中貿易戦争の余波があります。2018年からアメリカ、中国が相互に輸入品への追加関税を掛け始めた結果、関税を回避する目的で中国に拠点をもつ製造業がその拠点を移転しはじめており、なかでもある程度インフラが整い、かつ人件費が安いベトナムが、ここまでは漁夫の利を得た構図になっています。

優遇措置の中身は、大きく法人税の減免や補助金の付与といったところにありますが、主要地における一般工の月額賃金を比較してみると、タイのバンコク、マレーシアのクアラルンプールがそれぞれ413米ドルであるのに対し、ベトナムのハノイは217米ドルと半分近い点が、ベトナムを優位なポジションに押し上げています。

アセアン域内では賃金の上昇が進んでおり、ベトナムでは2018年ー2019年にかけて、最低賃金が平均で5.3%引き上げられました。今後、経済が活性化していけば、ベトナムの賃金はさらに上昇していくことでしょう。

一方、日本。生産年齢人口の減少と高齢化により、経済を活性化するためには働き手の確保とともに、生産性向上の大号令のもと、ICTへの取り組みなどが進められていますが、労働集約的産業である医療や介護、建設業などでは人手不足が顕在化しており、外国人の在留資格の門戸が拡大されました。なかでも外国人技能実習制度は、今注目の制度です。

この技能実習制度を使って受入れが顕著に増えているのがベトナムです。平成29年末時点の法務省のデータでは、技能実習生の受け入れ人数が多い順に、ベトナム(45.1%)、中国(28.3%)、フィリピン(10.1%)、インドネシア(8.0%)となっています。中国が多いのは、人口10億人の国であることを鑑みれば格差もまだ大きく、そのパイ自体が大きいことが中国からの受入れを支えているのかもしれません。一方、ベトナムの人口は2018年に9千万人を突破し、1億人に迫らんとしていますが、中国と比較すると、規模は10分の1程度でしかありません。フィリピンは人口1億人の国ですが、9割以上の人が英語を話すことができることから、賃金比較で日本よりも条件がよい中東諸国や英語圏の国へ流れてしまう、という事情があります。

日本に来るメリットがまだあるうちは、ベトナムから訪日してくる若者たちに期待できるのかもしれませんが、自国の経済が発展していけば、日本に来て学ぼうとする人の数の勢いは、やがて減速してしまうかもしれません。米中貿易戦争の余波は、こんなところにも潜んでいます。

経済的にも働く場としても、そして学ぶ場としても魅力的な国であり続けること。そのためにできる努力を、私たち一人ひとりがしていかなければならないのかもしれません。

(記事担当 阿部)