有事に備え 備蓄石油の融通体制をアセアンを含むアジアで構築

1月16日の日本経済新聞に、「日本の備蓄石油 アジアと融通 中東にらみ混乱に備え」と題する記事が掲載されました。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54486710W0A110C2EE8000/?from=rnikkei

 

経済の発展に伴い、石油需要の伸びが見込まれているアジア各国は主に中東から原油を調達していますが、アセアンをはじめとした新興国はIEA(国際エネルギー機関 International Energy Agency)が定める備蓄基準(前年の当該国の1日あたり石油純輸入量の90日分)を満たしていない国が多いといわれています。こうしたなか、日本では以前からアジアのエネルギー安全保障が、アジア経済の持続的な発展には欠くことのできない重要な要素であるとう認識のもと、アジアにおける石油備蓄の必要性と日本の支援の在り方などが議論されてきました。

 

(写真はイメージです)

 

石油備蓄の経緯には、1973年10月に起きた第4次中東戦争が引き起こした石油危機を教訓に、OECDの主導によりIEAが発足され、加盟国に対する石油備蓄の義務化や有事の際には石油備蓄を取り崩して加盟各国へ放出することで、石油の安定供給を確保しようとする目的があります。今回のニュースで注目に値する部分は、IEAに加盟していないアセアンの国々にも覚書を交わした締結国とは、日本国内に問題が生じない範囲で備蓄を融通することを想定している点にあります。

ご存知のように、2020年の年明けはアメリカによるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官の殺害に関するニュースは世界に大きな衝撃を与えました。今のところ、イラクにある駐米基地がミサイル攻撃の報復を受けたものの死傷者はなく、大きな報復合戦に発展することは自重されていますが、イランのすぐ脇を通るホルムズ海峡は中東の火薬庫と揶揄されるほど、その安全性は常に不確実性と隣り合わせになっています。

(写真はイメージです)

 

一方で、日本をはじめとしたアジア太平洋地域は輸入する原油の6割超を中東から調達しており、ホルムズ海峡が封鎖されることによる経済への影響は大きいことが明らかです。先のIEA加盟国間による備蓄石油の放出要請は、これまで2回行われていますが、そのうちの1回は1990年代に起きた湾岸戦争時に発動され、原油価格の大きな混乱を抑制した実績があり、こうしたことが今回の事件が日本の行動を強く促した契機になったものと認識できます。

アセアンの国々には、ブルネイやマレーシア、インドネシアなど自らが資源国である国もあり、こうした国では、緊急時には政府は石油産業保有の在庫をコントロール下に置くことができますが、多くの国で石油を輸入に依存する傾向は高まっており、アセアンでは2035年までに中国、インド、欧州に次ぐ世界第4位の石油輸入地域になることが予測されています。

アセアンでは中国の存在感が高まっていますが、非資源国である日本が主導してアセアン内での調整力を発揮することで、今後アセアン各国内が製油所や備蓄基地を整備する際に、日本企業が参加しやすいような基盤を整備する意図もあるようで、アセアンを取り巻く環境は今後ますます注目度が高まっていくことが予想されます。

(記事担当 阿部)

参考文献等:

・IEA(2013年)     「東南アジアエネルギーハンドブック」

・石澤 英俊(2016年) 「JOGMECの石油備蓄に関する国際協力」

・表山 信二(2007年) 「アジアにおける石油備蓄の必要性と日本の支援のあり方」